一企業として世界で最も持続可能なオーガニック・シャンパーニュ造りを目指しているシャンパーニュメゾン、テルモン。
シャンパーニュが未来永劫その品質を維持するためには、ブドウが育つ大地を守ることはもちろん技術の伝承など、持続可能なブドウ栽培・シャンパーニュ造りが重要になります。
その取り組みをどこよりも早く、そして本格的に進めているテルモン。
本記事では、テルモンの哲学や魅力、クラフトマンシップについてまとめました。
最も環境に優しいシャンパーニュを生み出す、その秘密を探ります。
知るべきテルモンの魅力
テルモンは、シャンパーニュ地方エペルネ近郊のダムリーで1912年にアンリ・ロピタルによって設立されたシャンパーニュメゾンです。
創業当時より品質の高いシャンパーニュ造りへの情熱は変わっておらず、今もなお最高品質のシャンパーニュをラヴァーたちに届け続けています。
そんなテルモンですが、品質の高さはもちろん環境への取り組みが特に注目されていることで有名です。
テルモンがなぜ世界で注目されているのか、その哲学と魅力を下記の内容にまとめました。
家族が繋ぐテルモンの歴史
上記でお伝えしたように、テルモンは創業当時よりシャンパーニュ造りへの哲学を変えることはありません。それは、テルモンを生み出した創業者アンリ・ロピタルの家族が繋いできた歴史があったからこそでしょう。
そんなテルモンの歴史は、1911年に起こったシャンパーニュ暴動に遡ります。シャンパーニュ暴動とは当時シャンパーニュのブドウ栽培家たちが起こした暴動で、フランス政府は鎮圧のために軍隊を送り込むなど大事件に発展しました。
そんな中、創業者アンリ・ロピタルは「Gloire au Champagne(シャンパーニュに栄光あれ)」という歌を制作。シャンパーニュの高品質水準の維持を生産者たちに進めたといわれています。
そして、その暴動をきっかけに同氏は自らの名を冠したシャンパーニュ造りをスタートさせたのです。1937年に同氏は他界しますが、その後は息子のアンドレ・ロピタルがセラーマスターに。
1939年にフランス軍最古の騎兵連帯「Cuirassiers(胸甲騎兵)」第二連隊に入隊しますが、1947年に除隊した後はシャンパーニュ製造を受け継ぎ品質と名声を発展させることに尽力しました。
1983年には、アンドレの息子セルジュがテルモンと共に父親の意思を引き継ぎます。さらに、1998年には同氏の二人の息子であるベルトランとパスカルにテルモンの伝統を一任。
2020年にレミー コアントローが主要株主となっていますが、未だセラーマスターかつブドウ畑の統括者は一族の血を引くベルトラン・ロピタルです。
現在のテルモンでも「優れたワインは自然からの贈り物であり、大切に守るべきもの」といった創業当時の考え方は一切変化していません。
創業者であるアンドレ・ロピタルの思いは、サスティナブルなブドウ栽培、100%オーガニック・シャンパーニュといった形で、今もなお同メゾンに受け継がれているのです。
徹底した環境への配慮
テルモンを語る上で「環境」といったキーワードを無視することはできません。
同メゾンのスローガンは“In the name of Mother Nature (母なる自然の名のもとに)“。全ての活動の指標となっています。
“優れたワインは自然からの贈り物”だからこそブドウが育つ大地を守るべき。このテルモンの考え方は今もなお継続されており、世界各国からもその活動には注目が集まっています。
さて、オーガニックなブドウ栽培というと、世界各国で取り入れられているイメージを持つ方も多いでしょう。実際「オーガニック」に関連する名が付けられたワインは世界各国で見受けられるようになりました。
しかし、そのイメージと現実は大きく乖離していることを知らなければなりません。
現在シャンパーニュ地方においてオーガニック認証を受けたブドウ畑は、わずか4%程度です。このままでは、テロワールの魅力を兼ね備えるブドウによるシャンパーニュ造りが受け継がれなくなって可能性があります。
そんな中テルモンは、2022年に収穫する葡萄畑の約83%がオーガニック認証を受けており、2025年までに自社の全てのブドウ畑を100%有機農業に転換するという目標を掲げています
また2031年までには、パートナー生産者も含む全てのブドウ畑のオーガニック転換を支援することを目指しているのです。
テルモンは、現在も除草剤、殺虫剤、化学肥料を徹底したブドウ栽培を心がけており、これから先もより自然な農法を徹底していくことでしょう。
さらにテルモンでは自然への敬意、そして持続可能なブドウ栽培の哲学を応用する形で、ヴィンテージごとの異なる収穫がもたらす個性を重視するためにボトルにシリアル番号を記載しています。
ブドウ品種はもちろんアッサンブラージュの割合からヴィンテージ、製法、適温といった細かな情報を1本のシャンパーニュに詰め込んでいるのです。
そのほか、二酸化炭素排出量の削減、物流システムの見直し、さらに外装材やギフト包装材を撤廃するなど、シャンパーニュ地方全体の模範にもなり得る環境を要視した取り組みを始めています。
サスティナブルが繋ぐ縁と変革
テルモンは持続可能なシャンパーニュ造りへの活動を拡大化させている背景には、同メゾンを支持する人々の存在があります。
テルモンは、「忠誠心」「謙虚」「勇気」といった3つのバリューに「テロワール」「人」「時間」といった価値観を重ね合わせたシャンパーニュ造りを心がけるメゾンです。そのモットーに運命的に共感したのが、あのレミー コアントローグループでした。
2020年にテルモンの主要株主となったレミー コアントローは、同メゾンが掲げる持続可能なオーガニックな手法によるシャンパーニュ造りといった冒険へと共に歩み出したのです。
さて、その物語の裏には現在テルモンの代表である、ルドヴィック・ドゥ・プレシのある思いがあったといいます。
ルドヴィック・ドゥ・プレシは、シャンパーニュ地方において最もサスティナブルなシャンパーニュを造ることを構想しており、それらを実現するための投資先を模索。
プレミアムワインやスピリッツで活躍を続けてきた同氏は、すでにオーガニック製法でシャンパーニュを造っているだけでなく、品質も高く長年経営で運営されてきたメゾンを探していたそうです。
そんな時、同氏が出会ったのがテルモンでした。
さらに、彼は映画俳優であるレオナルド・ディカプリオの友人でもあり、2022年にテルモンの活動に賛同した同氏はメゾンの株主にもなっているのです。
世界のセレブたちが掲げる地球環境を守るといった課題解決の第一歩に、テルモンが選ばれているといったエピソードは大変興味深いものではないでしょうか。
テルモンのクラフトマンシップ
テルモンは、伝統的な手法を今も愚直に続けているメゾンであり、ブドウが育つ大地の恩恵を最大限に生かしたシャンパーニュ造りで有名です。
ブドウは手摘み、さらに12万人もの人々が収穫にあたり最良のブドウのみを厳選して仕込みます。
「ワインはブドウから」と言われるように、テルモンの品質を維持しているのは素晴らしいブドウがあってこそなのです。
テルモンのシャンパーニュを素晴らしい品質へと高めているのは、ブドウそのものの魅力を引き出す「人」によるところが大きいでしょう。
まず知るべきはテルモンのセラーマスターである、ベルトラン・ロピタルです。上記でお伝えしたようにテルモンの創業者一族の一人であり、1999年より父よりセラーマスターを受け継いでいます。
量より質を重視する同氏の哲学により、土壌の保護、そしてテロワールへの敬意を忘れずにシャンパーニュ造りを続けています。また、同氏を語る上で欠かせないのは、ブドウ栽培にも力を傾けているところ。
セラーマスターというと醸造場に籠城するといったイメージかもしれませんが、同氏は自ら畑に出向きブドウの状態などを常にチェックしているといいます。自ら手がけるものだからこそ、全てを大切にしたいといった同氏の想いが見てとれるエピソードではないでしょうか。
また、2020年に同氏のアシスタントとしてシャンパーニュへの強い情熱も持ったオロール・ゲルルスカンが就任。
常にベルトラン・ロピタルに寄り添い、テルモンが受け継いでいた伝統的なシャンパーニュ造りを探求し続けています。
そして、デゴルジュマン・プロセス・マネージャーであるエルベ・カミュの存在も、テルモンにとって重要なものです。なんと30年以上にわたりデゴルジュマン・プロセス・マネージャーを務めてきており、テルモンのシャンパーニュが透き通るようにクリアである理由は彼の情熱の賜物でしょう。
テルモンを支える「人」たちの存在も、同メゾンの誇りなのです。
“In the name of Mother Nature (母なる自然の名のもとに) “をスローガンに掲げ、シャンパーニュ地方全体に強い影響を与え続けているテルモン。
これから先、未来永劫シャンパーニュという産地がブドウ栽培、そしてスパークリング造りの聖地であり続けるための環境保全への活動は全メゾンが目指すべき課題です。
いち早く、そして着実に成果を挙げ続けている魅力的なメゾンであるテルモンがどう成長していくのか、楽しみで仕方がありません。
シャンパンホテルでは、今回紹介したテルモンの世界観を体感できる空間をご用意しました。
ご用意するキュヴェは「レゼルヴ・ブリュット」。
シャンパーニュへの敬意を込めて生み出された、至極の1本です。
ぜひ、テルモンの世界観を「レゼルヴ・ブリュット」片手にお愉しみください。